GameEngineDev Advent Calendar 2022 11 日目の記事です。

開発中の 2D フレームワークについて共有します。

『GameEngineDev』カレンダーの記事ですが、 2D フレームワークに関する投稿となります。スケールが落ちますがご了承ください 🙇

背景

作っているもの

開発中フレームワークの名前は inkfs 🦑 です。ライブラリを組み合わせた程度のものですから、経験者なら 2 週間程度で再現できるでしょう。

2022-12-gfx-imguika_chan.gif
Figure 1: 画像の配布元サイトへのリンクを後日追加します……

ライブラリが担当するのはメディアの処理で、ウィンドウ・インプット・グラフィクス・テキスト・オーディオなどがあたります。その上の薄いレイヤが inkfs です。

ゲームエンジンとの違い

『ゲームエンジン』は『フレームワーク』よりも大規模な開発が伴っている印象があります。アセット処理の GUI ツールが付属していたり、ブラウザやスマートフォンなど様々なプラットフォームに対応します。

あるいは低レイヤ寄りのライブラリを自作していたら、『ゲームエンジン』に当たると思います。必要な知識も段違いです。そうした感覚がぼんやり共通されている気がします。

主なモジュール

inkfs 🦑 の主なモジュールを紹介します。

1. ECS (Entity-Component-System)

inkfs 🦑 は Rust でゲームを作るためのフレームワークです。

Rust でゲームを作る際は、データの持ち方が重要です。たとえば、

これらは Entity-Component-System を使うと一気に解決します。むしろ伝統的なゲームの作り方の方が Rust ではチャレンジングだったりします。

2. Scene graph

inkfs 🦑 のシーングラフは ECS の上に作っています。

2022-12-gfx-ui-text.gif

Renderable の共通コンポーネント

どの rendearble も以下のコンポーネントを持ちます:

様々な種類の renderable

様々な renderable をコンポーネントで表現できます:

アニメーションも容易に表現できます。

2022-12-gfx-dir-tween.gif

ソート

上の renderable は様々なデータに分かれていますが、頂点データに変えた後には同質のデータです。以下の DrawCall を作成後、 z_order でソートしてから描画しています:

pub struct DrawCall {
    pub z_order: ZOrder,
    pub verts_range: ops::Range<u32>,
    pub tex_id: rgpu::Id<rgpu::Texture>,
}

3. ウィンドウ・入力 (sdl2)

2022-12-gfx-scale-bug.png

主なウィンドウのライブラリ

ウィンドウ表示・入力処理のライブラリとしては SDL や GLFW が有名です。

入力処理

イベント駆動にするか、すべてのキー入力イベントを 1 つの Input オブジェクトに集約すると思います。僕は後者が好みです。

inkfs 🦑 では主に FNA の Input モジュール を参考に、入力状態のダブルバッファを持っています。また『仮想キー』のモジュールを作り、『Enter または Space』のようなキーを定義できるようにしています。

FPS カウンター

平均FPSを楽に近似する にある式を使うと簡単です。

僕はなぜか spike の計算が上手くいってないですが……

4. グラフィクス (wgpu)

もくもく

2022-12-gfx-fog-1.png

やばい

2022-12-gfx-fog-2.png

wgpuLearn Wgpu で見ると簡単なフレームワークのようですが、所有権が絡んで独自の制限がかかります。

wgpu::RenderPass<'w> と借用ルール

古典的な SpriteBatch は、頂点データの作成と描画関数の呼び出しを交互に行います。しかし wgpu を使っていると、まず頂点データを作成し、それから一気に描画関数を呼び出すという形になりがちです。

この方式は pipelined rendering に繋がります。

この方式に至るのは、 wgpu::RenderPass<'w>Drop トレイトを実装するためです。この場合 Drop Check という強烈な制約がかかり、 RenderPass のメソッドの引数はすべて RenderPassDrop するまで immutable になる……と思います。この制限下で伝統的な SpriteBatch をそのままポートするのはたぶん無理です。

Bevy Engine から学んだこと

wgpu の典型的な使い方は Bevy Engine から学べます:

TODO

5. アセット管理

同じテクスチャを 2 回ロードしないようする、そんなリソースのキャッシュを作成します。主に 2 種類の実装が思いつきます。

共有ポインタ方式

共有ポインタ方式です。 Rust だと Deref にするのは無理で、毎回 asset.get(); のような形で &T を復元します。

インデクス方式

アセットのユーザは、アセット配列へのインデクスを持つ形にします。毎回 &assets[asset_handle] のような形で &T を復元します。

アセット配列をページ制にすれば、ほぼ immutable 配列として扱える気がしますが、詳細をみたことはありません。

6. フォント描画

方法 1. SDF フォントを用いる

msdfgen, msdf-atlas-gen にあるように、フォントの輪郭を画像データで表現し、シェーダで任意のサイズの文字の形を復元することができます。

やってみました。

2022-12-gfx-msdf-44-2.png

完璧ですね。完璧にヨレヨレです。

方式 2. フォントテクスチャにラスタライズする

MSDF が上手く行かなかったので、 TTF のフォントデータを元に、動的に文字の画像データを作ります。 Rust だと fontdue が定番です。

それでは文字を表示してみましょう:

2022-12-gfx-font_32px.png

文字サイズを上げてみると:

2022-12-gfx-font_64px.png

急に馴れ馴れしい。フォントテクスチャが飽和した際は、フォントテクスチャをリサイズしなければなりません。

マークアップテキスト

Markup with :b[bold] text.

2022-12-gfx-markup-bold.png

Keyboard key :kbd[x]!

2022-12-gfx-markup-kbd.png

7. 開発者用 UI

ImGUI の SDL サポートやレンダラを実装しました。

2022-12-gfx-omgui.png

すべてが間違っています。

その他

ブラウザ対応、 Android 対応

イベント駆動のゲームループやアセットの非同期ロードなどが必要になりようです。

今の僕ではまったく力不足です。

ホットリロードしたい

したいのですが……

コルーチンが欲しい

欲しさのあまり、コルーチンを書くための言語を開発中です。 salsa ベースで言語サーバの機能モリモリの予定です。

まとめ

Rust で 2D フレームワークを作ってきましたが、他人が快適に使えるとは到底思えません。汎用の 2D フレームワークを作る人たちはとんでもないなと思います。